2021/05/12 16:35

最近、楽しみなはずのお出かけや散歩に心が弾まない。通勤にコロナ以前より息苦しさを感じていませんか。



週末の旅行が趣味だった私にとって、このコロナ渦で外出するにも職場と自宅の往復のみ。

県外の移動をされるだけで、相変わらず電車は満員で、日増しに窮屈さを感じています。

こんなときだからこそ、何か心だけでも軽くなるような、自由を感じれるものを作りたい。と思い。

私の大学時代、大学院と研究してきた、空の青さを写して色が変わる素材を使い、2020の4月の1回目の緊急事態宣言時から「自由を感じる空を身に付ける。」

為にリングを試作し始めました。



このリングのアイデアを思いついた経緯としては更に時間を遡り、小学生の時の話になりますが、科学雑貨や化石や鉱物、昆虫など博物学に関わるものに強い興味があったからです。

ジュールベルヌの小説『海底2万マイル』に出てくる、『スノードーム(透明な液体をガラスに封入した観測機。普段は透明で雨や曇りなど天気が悪くなると中に白い結晶ができる。)』

やゲームに出てきて実際に存在する宝石。部屋の中と、屋外で色が変わる『アレクサンドライト』などに興味を惹かれて居たことがきっかけなのかなと思います。


その後、美術大学に進学し、様々なものを作る中で紫外線に反応して色が変わる素材と出会い、強い好奇心にかられましたが、この素材を使た商品はほとんどなく、

印刷した紫外線チェッカーや、ビーズなど、実用とは遠いものだけで、この素材を使ってワクワクするものを作りたい。という思いから研究をはじめました。


研究を始めるも、樹脂が経年劣化を起こして、黄色くなってしまったり樹脂によっては紫外線を遮ってしまい、そもそも反応しなくなってしまう。など様々な課題が見えてきました。

紫外線反応材の実験の中で、掴み所のない青色が白色へ、白色が青色へと変化を繰り返している様子を見るうちにいつしか青が空に、影が雲に見えてきて、

私は『ちいちゃんのかげおくり』を思い出しました。ちいちゃんの影送りは、影送りという遊び(自分の影を10秒み続けた後に、青空を見つめると白い影が見える。という目の錯覚を使った遊びです。)と偶然重なり、空をテーマに作品を作ろうと決意しました。


それから100g 1万円ほどもする高価な紫外線反応の原料を仕入れ。市販の樹脂の配合を変えてみたり、樹脂の強度を補強する材料を組み込んでみたりしましたが大学の2年間の研究では、作品発表の直前になって作品が破損してしまう。そういったトラブルのおかげで協力いただいていた企業さんにご迷惑をおかけして、

それでも完全な空を完成させたいいという思いを諦めきれず大学院に入ってからも研究を続けました。

大学院の修了制作展でようやく満足のいく形で空の空間作品を完成させることが出来ました。
*空の空間作品についてはホームページに記載しております。

展示空間で子供が喜んで遊んでくれている。心安らぐ動画になりましたのもしご興味がございましたらぜひご覧ください。



さて、話を緊急事態宣言時に戻しまして、指輪制作にあたり、空の空間作品を制作するために培った技術と研究の成果を用いて、

100個ほどの試作に試作を重ね、普段使いしても身に付けていても邪魔にならないシンプルなデザインのリングにを作り上げました。

前述したように樹脂との組み合わせによっては時間が経つと経年劣化で色の変化がなくなってしまったり、樹脂自体の色が黄色く変色してしまったりと、様々な不具合が派生する素材でした為、

使い心地のほかに素材の耐久性の検証を十分に行い、1年がかりでようやく販売できるクオリティに仕上げることが出来ました。



ワクチンの摂取も遅々として進まず、外出自粛を余儀なくされている閉塞的な今だからこそ、作品や、指輪をきっかけに

アートや科学の面白さをきっかけに日常の不思議さや、科学の好奇心の広がる世界を知ってもらうきっかけとなれれば。


有名なお話ですが、福沢諭吉の残した言葉をお借りして『高尚な理は卑近の所にあり』というものがあります。

これは、身近な物事にこそ、真理が隠れているということです。

紫外線のように、目には見えなくても確かにそこにあるはずのものを知ることで、

更に好奇心が深まり世界が広がり、新たな発見に繋がる。

空の綺麗さや、毎日の楽しさがそんな未来につながっていったら良いなと思います。


長文、乱文を読んでいただきありがとう御座います。


内容をまとめたコンセプト動画を作成してみました。

なるべく、実物に近い形で色の変化を撮影しています。どうぞご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=4o9f8z2jiBM

2021.05/12